夏山の気象(その1)
山小屋の主人は朝起きると、空を仰ぎ雲の種類や流れ方を見,鳥の鳴き声や移動によって天気を予想する。また、ハイマツの先枯れの多少により冬場の積雪状況や風邪の強弱わかり、高山植物の開花の早遅いによって、登山客の最盛期の水場の確保や水源地の場所を決めると言う。昔の小屋番と酒を酌み交わしながら話を聞いたことがあります。登山者にとって心の安らぎを与えてくれる可れんな高山植物や鳥、そして残雪は彼らにとって、山の気象を黙って教えてくれる唯一の教科書である。それぞれの山岳には経験から出た天気のことわざがたくさんあるので覚えておくと便利である。
さて、梅雨明けると平地では連日30度を越える酷暑が続く。山岳も年の内最も安定した登山日より続き、よく「梅雨明け10日」と言って山の好天を言う。しかし、私が、白馬岳天気相談所に勤務していた7年間の梅雨明け10日の典型的な天気傾向を見ると、
ご来光が5時前後に見られ、山肌が真っ赤に染まる頃は180㎞遠方の富士山まで視界が見える。が。午前10時を回る頃になると決まって積雲の頭がもくもくと成長し山肌を登り始める。この雲が沸く時間は昨日より今日、今日より明日と日が経つに連れ早くなる。
そして、昼近くなると視界100-150mの霧に包まれる。ところが梅雨明け3日ごろになると、そのうちのある雲は積乱雲(雷雲)まで発達し夕立や雷のおまけがつくことが多くなる。この雲は、日没間近になると今度は頂きから谷や沢に向かって滝のように雲が流れる(滝雲)。その頃夕焼けが始まり雲の演出がはじまり素晴らしい景色に見とれる事が多い。このように中部山岳の場合梅雨明け二・三日位から急に夕立や雷にガ多くなる。経験から梅雨明け10日でも午後は夕立・雷があることを予想して早めに行動することが必要である。
ところで、山で雷に遭遇すると、その恐ろしさは言語絶する。「山の早立ちは三文の徳」言われ夏山の場合は午後になると雷が発生しやすいので行動は昼までに少なくとも三分ニの行程を終了し、遅くとも午後二時までには目的地に着くことが山の鉄則である。天気予報はあくまで予想であり、過信することは避けたい。より安全で快適な登山をするにはことわざ、観天望気、天気予報など気象の知識を使って登山者自身で山の天気を判断することが、山の好天の利用方法である。
続きは、夏山の気象(その2)へ
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