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2006年8月22日 (火)

夕立は馬の背を分ける(夏のことわざ)

昔から雷によって梅雨明けを知らされ、「雷が鳴ると梅雨が明ける」と言われているとおり、夏の気象の話題は雷に代表される。

信州は梅雨が明けると、毎日の最高気温が連日30度を越す酷暑となる。午後は決まって夏空を飾る入道雲(積乱雲)を知らない人はない。この入道雲は夕方になると雷鳴と共に激しい雨を降らせ、暑さを吹き飛ばす自然クーラーの役目をする。

日照りに悩む農家にとっては千金の雨である(今年の上田盆地は7月30日の梅雨明けから8月22日まで雨なしの砂漠状態)。この雲の中では電光が飛び交え,雷鳴がとどろきわたり、雷雨や突風のおまけまでつき、夏空いっぱいに暴れまくる。ただ、この現象はごく小規模内で起り、「夕立は馬の背を分ける」と言われるとおり、雨の降るのは積乱雲の下だけで、たった30-40kmの区域で、短時間で終わってしまうことが通例である。この雷は発生地から東に移動することが多い。また、谷筋や川沿いに沿って動きやすい言われており、その地方特有の雷の道がある。

信州のことわざを例にとると

「浅間の夕立は音ばかり」(佐久平)
浅間に発生した雷雲は群馬方面に移動し,佐久には来ない

「鳥川入口からの夕立は必ず来る」(松本市)
常念岳に発生した雷雲は川に沿って松本平まで東進する

「八幡隅みの雨と隣りのぼた餅はきっと来る」(善光寺平)
長野の雷雲は信州新町方面から来るものが多い

「別所の雷と隣りのぼた餅はきっと来る」(上田市)
上田市の西から来る雷は上田市に来ることが多い

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2006年8月20日 (日)

夏山の気象(その3)

夏山の話題になるのは、何と言っても恐ろしいのは雷である。

雷は一時的な現象なので登山には支障をきたさないため、比較的甘く見て電撃により、遭難する例は登山人口に比例して近年は減少している。さて、夏空に大きな入道雲が出て、午後になると雷鳴とともに激しい雨が降る。ところが、山の中にいるとその雲の中に入っているため、霧の中で突然強い雨に遭遇して、稲妻が走り、耳の鼓膜が破れるような雷鳴、雹も降ることすらある。
昭和42年8月1日午後1時30分、松本の高校生が西穂高岳独標で一度に11人が電撃に打たれて死亡した事故は山での雷の恐ろしさを端的に物語っている。山での雷の恐ろしさは体験者でなければわからない。

雷の発生原因はいくつかに分類出きるが、夏山の場合の殆どが、強い夏の日射の影響で大気が不安定になる雷(熱雷)が起こる。また、寒冷前線が通過するとただでさい雷が起こるところへさらに不安定が増し、大規模な雷(熱的界雷)となるこの2種類がある。中部山岳の雷は北関東地方に続き雷の発生地となっている。特に、八ヶ岳や浅間山麓、北アルプス南部が多く発生している。雷の発生する時間帯は、正午を過ぎるとグーンと多くなり、午後1時から午後3時が一番多い。

山で雷災を避けるには、一番新しい天気予報を頭に入れておいて、ラジオでの「ガリガリ」と言う雑音に注意を払い雷雲をキャッチしながら行動し、早目に山小屋に着くことが最も安全な方法である。登山中に大粒の雨が降りだしたら、大きな雷雲が頭上にあると予想し、素早く岩かげ、窪地に逃げこむ金属を身体から離すことが応急手段である。雷の中でも最も恐れられているのは「カラ夕立」と言い、雨も降らず雷光雷鳴もなく、突然電撃を受ける場合がある。

20年前白馬山荘小屋番の清水支配人は山の雷について---「平地の雷は上からであるが、山の雷は山膚を這う。青光の火柱が一瞬にピシャーアーと言う音と共に岩肌をお染めた時、登山者が倒れて意識不明となり、雷災を受けたのを目撃した」と恐ろしさを語って頂いたことを思い出す。

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2006年8月 5日 (土)

夏山の気象(その2)

山岳は7月下旬から8月までが一年中で一番気温が上がり、3000m級の稜線では快適の山歩きができる日が多い。しかし、夏山と言っても夏台風が来る年は、台風が迷走したりすると夏山らしい日がほんの数日の年もある。山の気温は常に天気に結びついており、晴れると朝晩は冷えこむが日中は気温が高く快適である。しかし、曇りや雨の日は気温が低く気温の変化が少ない。これは山の気温の特徴の一つである。

 夏山とは一般に7月から8月を言うが、気温で見ると、白馬山頂(白馬山荘海抜2830m)の観測値で10年間の平均気温が10度以上続く期間の40日間を夏山と定義したい.。この期間は梅雨が明け頃から秋をつげるトウヤクリンドウが満開の8月25日頃の短い期間である。この夏山期間で平均気温が11度以上の日を高温期間といい。この高温期間は7月24日から7月29日、8月1日から6日、8月10日から16日の3回出現しており、統計上の好天で、太平洋高気圧の勢力が強い時である。したがって、夏山の天気は太平洋高気圧の強弱により天気と気温が左右される。特に、7月末は梅雨明け後、高気圧の勢力が衰弱し、悪天と低温になる特異日である。夏山の気温は高いものと思っているが晴れの場合でもせいぜい上がっても15度前後である。日射が強いために暑く感じるが、夜はグーンと気温が下って冷蔵庫の中の温度と同じ6度前後まで下がる。雲雨天の場合は8-10度前後の運動を繰り返すに過ぎない。雨の日は霧につつまれ、風の強い場合が多いので、体感温度は0度近くまで下がってしまうので寒さを感じる。

白馬岳登山の場合は雪渓の上を3時間も歩くので、好天の時でも雪温は0度前後あるので足元ほど気温は低く、半ズボンや運動靴を履いているハイキングスタイルの人は体温を奪われる。夏山でも7月初めや8月の終わりは氷が張り、雪、みぞれ、冷雨もある。夏山と言っても霧や雨に打たれると体感気温が下がって、足が前に出なかったり、精神的に不安となり、ベテランの登山者でも不覚をとってしまう。最近はシルバー登山者が多いので気温には特に注意し、寒さには充分気をつけて登山を行って頂きたい。

続きは、夏山の気象(その3)

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