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2007年7月30日 (月)

気象ビジネスの現状と期待

はじめに

 地球規模の気象異変が続いている西日本の高級魚・サワラの水揚げが東北の海で急増している。この100年で日本海の海水温が1.6度上がった。地球温暖化の影響が漁場の変化に現れてきた。
 世界的に都市化や工業化が進んで異常気象被害は経済被害となって、その被害額は膨らんでいるのが目立ち、気象は大きなビジネスリスクとなってきた。気象情報を経営戦略にどう取り込むかが、特に流通業界の経営者に問われている。 より高度な気象サービスを実現するため、1995年には気象業務法が一部改正された。 局地予報(ポイント予報)が民間に開放されることになった。予報士制度も発足し、現在は6400人近くが試験に合格し、民間の予報許可事業者の数も、大小あわせて合計58社にのぼった。気象情報提供ビジネス分野の市場規模は300億円を超えると推定される。
気象事業者の収入は気象情報が高度化し、それを伝える通信網がインターネット化するとともに、潜在需要が一気に出始めた感じである。

1、気象ビジネスの出発点

 現在拡大している気象ビジネスの最大の特徴は、気象庁の公表している予報資料を土台にし、目的に合わせて独自の予報を加え、カスタマイズしていることだ。これまでのように予報資料から必要な情報を抽出して伝達し、適切な解説をするところから大きく踏み出した。
 これまでは防災が主な目的だったが、50年代になって、気象庁の公表する天気予報などを報道機関に伝達・解説する役割を、部分的に公益法人である日本気象協会がおこなうようになった。多様化する民間へのサービスを、国が行なうことに限界があり、この時始めて気象情報が有料化した。これが気象ビジネスの出発点だった。
折しも、テレビ全盛時代が到来し、定番となった天気予報番組で多くの気象解説者が活躍、単なる伝達役から解説役・キャスターへとサービスの内容も向上していった。現在でも気象ビジネスの一つの柱である。
 これまでの市場は防災と事業効率の向上を目的にするものが多かった。例えば海上工事関係者には、安全を確保するため工事区域の強風や高波の詳細な予報が必要で、個別に詳細な気象情報を伝達するサービスも行われるようになった。さらに、気象庁の予報許可を受けて、特定者向けの未公開情報を提供するサービスも数多く始まっている。

2、デジタル予報の頭脳「コンピュータシステムとは」

 テレビの天気予報に登場するお天気キャスターの多くは日本気象協会の職員でしたが、最近は各支社が応募した気象予報士をもつ看板キャスターが各放送局に存在している。顔を出さないで声だけで仕事をするラジオの担当者もいる。あるいは声と顔も出さないで新聞の天気予報欄に原稿を書いているスタッフもいる。身じかにあるこれまでの解説予報を「アナログ的出力」と呼ぶことにするならば。
 コンピューターシステムで出来た「デジタル的出力」は、いま圧倒的パーワを発揮している。コンピューターの導入によってデジタル化されてきた気象情報は膨大なソフトと技術で解析、編集、商品化され、可能な限りリアルタイムで配信されている。
 「東京杉並区の48時間先、1時間ごとの天気や防災情報が知りたい」というように、より詳細な気象情報を求めるユーザに対しては、別途コンサルタント業務としてその地域のポイント予報による防災サービスをも行なっている。
 天気予報や気象情報がパソコンで自由自在に取捨選択できる時代であり、日本気象協会はそのディジタル化を37年前の1970年後半から行なっている。
 デジタル化の頭脳部がコンピュータシステムだ。このコンピュータシステムの最初の仕事は気象庁から送り出されてくる膨大な数値・画像データーを24時間漏れなく受け取ることで、社会に出る膨大な情報の通り道に設けられた関所として機能している。
 このコンピュータシステムの基本的な任務は気象庁の受信された情報を瞬時的に編集加工して送り出す即時配信システムでもある。扱うデータ量と速度を武器に情報通信社の役目と天気情報を武器とするコンサルタント会社の役目をもっている。

3、気象情報提供はインターネットや携帯電話まで

 コンピューターシステムは数値予報データを気象庁から順次受ける他 アメダス・レーダー等や気象会社独自の数値予報計算システムからの出力結果(予報)や雷検知センサー・各気象観測データがある。またユーザが観測している気象・雷検知・波浪データや外国から購入しているアメリカ・ヨーロッパなどの静止衛星画像・世界の気象データーなど個別に受信して、データを編集・加工し商品化(プロダクト)している。
 コンピューターシステムは、官公庁、報道機関、民間企業などのユーザに商品化された紫外線情報・熱中症予防情報・夏山気象予報などのデータや気象衛星画像や気象レーダー映像を配信されている。
 配信されている情報はいくつかの方法で圧縮しパソコンでも問題なく受け取れるようになっている。また、最近はインターネットや携帯電話による配信も行なっている。
 情報量はあまりにも大きいのですべてをユーザのパソコンに送るわけにはいかない。
 量的に受け取れても、定型的な処理をいちいちパソコン上でやる必要はなく、なによりも大事なのはユーザが簡単に自分の必要情報を得られるように情報の切り分け、適切なラベルづけをおこなっている。府県別にまとめる地域抽出や雨だけに絞って順位を求めるテーマ抽出など、適材適所の編集処理を行うシステムである。
 ユーザも的確な判断のために情報がほしいので、煩雑な情報を送り込まれてはかえって困る。加工せずに右から左へそのまま出す例は、地震・津波・気象警報・注意報の非常報と言われるデータである。観測網の整備で震源の位置情報や津波が発生するか即座にわかる緊急地震速報も配信している。情報を受け取った人が自分で判断し対処出来ることが大事である。津波の可能性があれば1秒を争うものになるので、データをストレートに配信して、早く確実に知らせる事が重要な役目である。
 情報を受け取る端末が、最近はパソコンや携帯電話で可能である。現在のユーザは、まず防災情報を受け取っている地方自治体・電力・運輸機関等がある。
 情報はスタンダードメニューから始まるが、ユーザそれぞれの防災課題に対応したプログラムを組んでいる。雨が怖いところ、風に弱く・波高に弱いところ、雪や凍結を警戒する場合もある。防災情報を受け取る事は非常時の危機管理だが、日常業務の労働軽減や経費削減にもつながる。
 緊急時にだけ担当者に携帯電話で職員を召集すれば、それ以外の時には担当者は現場を離れていることが出来る。気象情報受信端末導入で無駄な宿直を無くし,経済効果は大きい。
 農業はカスタムバージョンの気象情報が特に有効である。他の気象情報に重ねて、自分に必要な条件の情報を得たいからである。農業の場合1キロメッシュ位までの地域を狭めて精度を上げた要素別の予報により農薬散布や生育予測に活用する情報が欲しい。
 このようにして、新聞・テレビよりも、177の天気予報よりもはるかに具体的な個別の気象情報が、極端にいえば、ひとり、ひとりが違った天気予報を求めることさえ可能な時代の到来である。気象情報のディジタル化はインターネットや携帯電話等のマルチメディアにより更に拡大化が始まっている。

4、気象ビジネスの利用効果

事業効率の向上の例だと船会社がある。遠洋航海で風や波の穏やかな航路をとれば、日数や燃料など多大な経費節減につながる。
電力会社にとっても、効率的な発電体制を整えるために、気温の予想が欠かせない。電力消費量は気温によって変動する。例えば東京電力では、夏期の日平均気温が1度上昇すれば、最大電力需要が原発の発電量の1.5基分(140KW)も必要といわれている。
 このように世間には従来から様々な気象ニーズがあり、建設・道路・航空・農業など幅広い領域で、種々の気象情報が生かされてきた。それがこれらの分野でも、最近の技術革新と規制緩和を受けて、新しい利用価値が生まれている。一段と詳しく提供できるようになった雷情報の利用は、電力会社や電力の大口需要家である大規模な工場で利用している。
ただし、現状では利用効果が判断できないために、気象情報を戦略的に、またリスクを少なくするために利用することをためらっている場合がある。このため、気象ビジネスの定着と発展には、利用価値をより客観的に評価する必要がある。気象ビジネスは、情報関連のハイテク利用産業であり、しかも環境保全に関連する事業でもあることから、発展性があるとみられている。アメリカではすでに1千億円規模に成長しており、日本市場は、まだアメリカほど社会が成熟していないので、さらなる拡大が期待されている。             

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