2007年8月23日 (木)

信州の夏の話題

信州の夏の話題

今年の夏は、8月に入ってから太平洋高気圧は強く暑い日が多くなっている。8月16日は岐阜県多治見市と埼玉県熊谷市の最高気温は40.9度を記録するなど、全国的にこの夏一番の猛暑となり、日本の観測記録を73年ぶりに塗り替えた。

記録としては、16日の最高気温40度以上の地点は、以下の5地点であった。

順位地名/県名温度時間
1位 熊谷/埼玉県 40.9度 14:42
2位 多治見/岐阜県 40.9度 14:20
3位 越谷/埼玉県 40.4 度 13:50
4位 館林/群馬県 40.3度 15:00
5位 美濃/岐阜県 40.0 度 14:40

史上最も暑い一日だった。アメダスの観測時間間隔が細かくなっていたら、最高記録はもっとあちこちで更新されていたかも。
 長野県松本市も8月に入り毎日30度以上で、10日からは35度以上の日が続いており、40度には及ばなかったが、16日は36.8度の猛暑日であった。

海抜の高い山国、長野県でも日中は30度を越し、風も弱く、毎日同じような炎天下が続く。長野県で本格的な夏の日がいく日あるのか、各地における真日日数(最高気温30度以上の日数)を平年でみると、長野県内で一番期間の長いのは下伊那郡泰阜村以南で55日から57日、次いで40日以上が天竜側沿いの松川町以南と千曲川沿いの上田盆地から善光寺平、松本の平野部である。
 一方、避暑地で有名な軽井沢は4日、野尻湖6日、菅平・志賀高原・上高地では30度以上の日はほとんどない。沿岸部の東京は47日、横浜39日、新潟32日となっている。
長野県は内陸性気候であるので、標高差や緯度差をなくしても強い日射で、盆地では気温が沿岸部より高いが、人体が感じる暑さは気温のみではなく、湿度・風・日射などの気象要素によって決められる。 

暑さの不快を表現するものに不快指数があり、これは気温と湿球に係数を乗じて出した指数である。この値が75以上であれば人口の10%が不快を感じ、80になると65%、85以上になるとほとんどの人が不快となるという。
長野県の平野部は日中の気温は沿岸部より高いが湿度が小さい(8月の平均湿度東京80%、長野76%)ので、沿岸部より蒸暑さが少ないことと、夜間の放射冷却により涼しさがあるため、不快指数は沿岸部に比べてかなり小さく過ごしやすい。
 なお、アメリカ人と、日本人とでは指数が違い、アメリカ人は80%で全員不快を感ずるが、日本人は85で93%が不快を感ずるという。

長野県の最高気温の記録は(私の知る限り)昭和17年8月3日で泰阜村39.8度(今年塗り替えられた?)。日本の記録は上記の40.9度である。世界記録は、バスラ(イラク南東部)58.8度である。日本の暑さは最高気温の値で世界に比較すれば問題にならない。インドでは日本より相当暑いので、家は石造りが多く日中は戸を閉めている。窓を開放して風を入れる日本と比べると反対である。日本も最近は冷房を入れるので、窓を閉めることが多くなってきた。しかし、ヨーロッパと比較すればずっと暑い。これは日本がヨーロッパより緯度の低いこともあるが、一番に湿度が高いことである。日本の中でも夏の過ごしやすい長野とパリを比較すると長野でもパリよりは湿度が大きく気温も高いので不快度は長野が高くなっている。

今年の猛暑の原因は、ラニーニャ現象により、太平洋高気圧の勢力を強めているためであり、高齢者の熱中症による死者が急増している。
8月17日も午前中から東海・中部地方を中心に気温が大きく上昇した。岐阜県多治見市では午後零時半に40.8度と、前日記録した国内観測史上最高の40.9度に迫った。地球温暖化現象が一歩進んでいるように思える体感温度だ。

ラニーニャはスペイン語で「女の子の意味」。
南米ペルー沖の海水温が0.5度以上低い状態が半年間続く現象で、
日本の夏の高温に密接に関わっているとされる。逆の言葉は「エルニーニョ現象

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年3月25日 (日)

信州の本格的な春

信濃路の3月春分の彼岸中日は昼と夜の長さが同じになり、この頃から渡り鳥のウグイスやヒバリの初鳴きが聞こえる。4月になると花と新緑の季節で暑くもなく寒くもない人間にとっても快適に過ごせる季節になってくるが、四季の中でも春は意外と気象災害や気象病の発生する割合が多く脅かされる。

さて、春の期間のとりかたにはいろいろあるが、日本の季節区分(日本気候表)によると、春は早春・春・初夏の3つの小季節に分けられる。
早春とは移動性高気圧が日本付近に去来する割合が多くなる2月20日頃から3月末頃まで、は冬の季節風が吹き止む4月1日頃から5月中旬まで、初夏とは夏のような暑さを感ずる5月中旬頃から日本付近に梅雨前線が停滞する前の6月中旬頃までを言う。
一般には3月から5月までの3ヶ月を春と呼んでいる。

ところが信州は地形が複雑の上に南北に長いため、飯田地方でウメの花を咲いているのに信越県境方面は根雪が残っているように春の来る時期がまちまちである。
春の季節の進み具合を教えてくれる一番の目安は、植物の開花や渡り鳥の初見・初鳴きなどがある。
植物は平均気温が5度以上になると、冬眠状況にあった秋蒔きの麦類や冬越しの野菜類をはじめ多くの植物が活動を始め生育する期間を植物期間と言っている。

長野県の植物期間のスタートは伊那谷以南は3月中旬と最も早く、3月下旬に入ると伊那谷・南木曽・松本平・諏訪湖周辺・上田盆地から善光寺平は平年であればスタートする。
そして、4月上旬は山間部をのぞき、殆どの地方が植物期間となり、南の地方ほど早く、標高の高いところは気温が低いため、山間部は日照時間の影響も加わり遅くなっている。
植物期間のスタートが本格的な春の訪れと言われているが、春が最も早く来るところは飯田地方と海抜が1000メートル以上の地方では1ヶ月もの差がある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月 3日 (土)

信州の冬の主風向

信州の冬の天気を特徴つける一つに北西の季節風がある。

冬型の気圧配置になると,この北西の季節風は、シベリヤから日本海を渡り、信越方面に雪を降らせ太平洋側に吹き降りる。最近は気象衛星でスジ雲が明確に現れている様子を見ると理解できる。信州を吹き走る冬の主風向は一般に「寒い北風」と言われるように、北風が吹くと思っている人が多い。しかし、冬季における最多風向を調べて見ると必ずしも北よりの風が吹くとは限らない。その原因は北アルプスをはじめとする高い山や深い谷が、縦横に走る複雑な地形などの地理学的な影響によるところが大きい。つまり、信州においては局地的な地形により作り出された特徴をもつ季節風が各地域に吹きしきるものである。

例えば、山の傾斜面を吹きおりる強い風を「おろし」と言い、関東地方では「赤城おろし」「筑波おろし」など名立たる「おろし」がある。信州にも規模は小さいが、北安曇白馬村に「白馬おろし」諏訪地方に「塩嶺おろし」佐久地方に「八ヶ岳おろし」などがある。ところで、気象観測所における冬季の最多風向をもって平均的風向とし、これを基にして、各場所の瞬間的な風の方向と平行となる仮想的な空気の流れを示す曲線を求めた。そこで冬季の信州の風の特徴をみると(長野県内の冬季における流線図は別に作成してある)

*善光寺平;飯山方面から吹いてくる北東の風 *上田・佐久地方;西風主体 *大町・北安曇地方;北風

*松本平;全般に南風 *諏訪地方;北西の風 *伊那谷北部;は北風、南部は南風 

冬でも松本地方や伊那谷南部は南風が卓越し主風向となって、風速も強めである。このため、飯田地方には家の南側に防風の役目をする生垣や土蔵などは板で覆う壁を設け、また、家の向きが南向きに建てられている家が少なく、むしろ板壁にしたり、窓をつけない農家が多い。信州の冬季における風向は複雑で谷や山の走行に沿う方向となっている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月20日 (土)

信州の寒さ

雪と共にこたえるのは寒さである。

日本で最も寒いのは北海道である。信州もそれに劣らず寒い方である。例えば、軽井沢と稚内の厳冬期を比べて見ると、軽井沢の方が約2度も低く、札幌より1度ほど低くなっている。

長野市の年のうち一番寒い時は大寒(1月21日)後前後で、長野県内で一番の寒い記録(最低の極値)をしたところは、南佐久郡川上村の氷点下24.6度である。日本での記録は旭川の氷点下41度、世界では南極のボストーク基地(ロシア)の氷点下88.3度である。同じ気温でも風の強弱でよって体感気温は違ってくるが、1メートルにつき2度くらい低く感じる。

その点、信州は風が弱く、関東のからっ風の強いところに比べて、意外と寒さを感じない。年の内で最高気温が0度に達しない日を真冬日と言う。長野県内のこの日数を見ると東京と東海地方の真冬日のないところは伊那谷の以南にあり、冬でもしのぎやすさを示している。

真冬日の一番少ないところが飯田付近の1日、松本から上田及び善光寺平らのにかけての5日以内と少なくなっている。軽井沢は26日と最も多い。海抜高度に比例して信州の真冬日は増加しているが、県北部は雪の影響があるため日数が多くなっている。今年度はエルニーニョの影響で暖冬がクローズアップされているが、今冬は変動型の寒暖の差が激しいような気がする。

寒さは人間の寿命を短くすることもあり、脳溢血や心臓病、肺炎など冬季に死亡する割合が多くなっている。特に、病気がちの人や老人のいる家庭では、充分注意を払いたいものである。また、冬は災害が目立つため気象情報にも耳をかた向けるつつ、風呂に入る時は室内の温度管理など気をつけるようにしたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

雪との闘いの日々

信州の雪の訪れは北アルプスの峯から始り、山麓に降りてくるのは11月の中旬である。

長野市の初雪の平年値は11月21日、松本は23日、諏訪27日、飯田では12月3日で、信州の北部ほど早く、南部ほど遅くなっている。
降雪の終日は逆で、飯田では3月29日、長野は4月10日となっている。シーズンの総降雪量は信州の人の住んでいるところで一番多いところは、下水内郡栄村で1,500㎝(推定)前後、日本の豪雪地帯でもトップである。観測所のある所では野沢温泉の1,050㎝、白馬・飯山の500㎝が多いところである。長野周辺は150㎝、上田・松本では100㎝を割り、飯田にいたっては50㎝以下少量である。

また、日本で最も積雪の記録で量の多いところは飯山線(当時の国鉄)で、計測した森宮野原駅で昭和20年2月24日785㎝を記録したのが日本で最高積雪である。
ただし、山岳観測所では伊吹山が1,182㎝を記録して、おそらく世界一の最新積雪となっている。この積雪の雪圧は直径10㌢のパイプでも春になると雪に推されて針金のように曲がっているほどであり、家が雪の重みで倒壊することもある。屋根の面積50平方メートルに100㎝雪が積もった時の重量は約15tにもなるため、屋根の雪おろしをしなければ家の倒壊する可能性が高い。豪雪地帯に住む人にとっての冬の季節は、まさに雪との闘いである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月28日 (土)

暖房の開始日

 信州では11月になると平野部にも初氷の便りが聞かれ、朝晩はこたつやストーブを使用する家が次第に多くなる。そして、11月中半ばを過ぎると木枯らしが吹いて初雪も舞うと官公庁や会社は暖房を始める。

暖房が必要になる時期は地域や生活事情によっても違っているが、気温で言うと日平均気温が8度を下回り、朝方の気温が4度を下がる頃が暖房開始基準温度として扱われている。しかし、気温がどのくらいになると暖房がほしいかは厳密に言うならば各個人によって、また、使用する目的によっても違いが生じる。

暖房の開始期を見る場合、暖房の方法にはいろいろあるので、ここでは一様の目安として官公庁や会社で広く使われている暖房を平均的に見ると。
信州では最も早く暖房をするのは海抜高度が1000m以上の佐久・木曽地方が10月末、そして11月に入ると大町・白馬、飯山の県北部地方や諏訪・木曽地方の海抜700m前後の地方である。
11月中頃は平野部の善光寺平から上田盆地にかけてと、松本平、伊那谷であり、最も遅い地方は11月20日過ぎの飯田地方である。信州は南北に長く、その上海抜高度差が大きいため、暖房開始期のl地域差は約25日もある。

最近の家庭暖房を見ると、昔は火鉢、炭こたつに比べ、エアコンやガス・電気などになり、手軽に用意できることもあって、暖房を開始する時期が早まってきた。また、生活文化の向上に伴って、暖房温度が次第に上昇していることは確かである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月22日 (金)

信州の紅葉前線と紅葉樹

 北から南へ、山の頂きから里へと降りてくる紅葉前線は、春の桜前線とはまったく逆である。すでに、信州の高原や渓谷では一部紅葉が始まっている。

この紅葉になる気象条件は、朝方の気温が8度から9度以下に下がる日が幾日か現れると、紅葉が始まると言われている。また、その年の気象特性によって、紅葉の始まるのが早いか遅いか、美しい紅葉であるかどうかが決まる。

紅葉の美しさの第1条件は秋の高気圧におおわれるような秋晴れが多いこと。即ち、日照をよく受けて朝晩の気温が下がりやすいことである。例えば、渓谷のような地形で昼と夜の気温差が大きい条件のが最も美しい紅葉見られる。しかし、紅葉が最も嫌うのは強い台風と秋の長雨の続くような年で、特に葉がいたんだり、同化作用がストップしたりで、鮮やかさがなくなる。

さて、信州の紅葉の名所の例年の見ごろと代表的な広葉樹は次のとおり。

信州の紅葉の名所見頃代表的な広葉樹
野尻湖 10月中旬 山モミジ、唐松、野尻ボダイジュ
戸隠高原 10月中旬 ブナ、カエデ、白樺、唐松
志賀高原 10月上旬 ダケカンバ、ナナカマド
奥裾花渓谷 10月下旬 ブナ、カエデ、ミズナラ
軽井沢高原 10月中旬 唐松、シラカバ、カエデ
上高地 10月上旬から中旬 ナナカマド、唐松、カエデ
中央アルプス駒ケ岳 9月下旬から10月初め ナナカマド、ダケカンバ
天竜峡 10月末 モミジ、カエデ

| | コメント (0) | トラックバック (0)